足るを知る、終(つい)のすみかのシンプルライフ

家庭料理研究家大原照子さん

本日は、家庭料理研究家でミニマリストの大原照子さんにまなぶ、おしゃれで、元気で、愉快な、「足るを知る、終(つい)のすみかのシンプルライフ」です。

ミニマリストのインテリアというと、白くてシンプルで手軽な価格のIKEAや無印良品などが頭に浮かびます。わたしもネットでIKEAで日用品などを注文することがありますが、今日ご紹介するのは、それとは違ったシンプルライフです。

増改築6回、新築3回の経験をもつ故・大原照子さんの暮らし方を拝見したいと思います。

大原さんが新しい暮らし方に切り替えた際に、それを紹介した取材番組を見る機会がありました。そのときのことが強く印象に残っています。所持していた品々のほとんどを手放し手元に残したのは、わたしの記憶が違っていなければ、10点だけと話されたと思います。この言葉にひどく驚かされました。そして大原さんは視聴者に向けて「あなたもなさってごらんなさい、とても快適ですよ。」とおっしゃったのです。わたしは、「えっ、嘘でしょ。それだけで生活できるの?なんだか・・・さびしぃ・・」と感じつつ、ちょっと衝撃的インプレッションを心に落としたまま、今日に至っています。

家庭料理家大原照子さんの書斎
居間を書斎に 大きな机は、おもてなしのテーブルにも早替わり 全室床暖房(床材コルク)
家庭料理家大原照子のクロゼット
季節の入れ替えなし壁一面のクロゼット / 事務用品の収納棚

それまでの大原さんは洗練されたエレガントな雰囲気を醸(かも)されて、それでいてオーソドックスな佇まいの方でした。けれどもそのときの大原さんは、髪をピンクに染めていらっしゃいました。それもまたどきっとするほどストイックな印象に映りました。変身なさったのです。鑑みればその変身は料理家から、ご自分自体も作品の一部となってライフスタイル全域にわたってアーティストに変貌されたのですね。

ドクター・ホフマンのクッションと牡丹
アールデコ時代の作家ドクター・ホフマンの生地を使ったクッション / 住まいのそこかしこに花のある生活

イギリスとの往復暮らしで培った審美眼で選ぶアンティーク収集家だった大原さんの住まいには、骨董品が生活の一部として実用的に用いられていました。そうしたアンティークの品々に囲まれた住まい方から、必要最小限のシンプルライフへ、70歳を超えて切り替えたのです。そして長年の多忙な仕事人生から、ゆったりと心ゆたかにマイペースで暮らすスローライフにシフトされました。

リフォームの際に出した条件は3点で、100歳になってもおしゃれで、元気で、愉快に暮らせるミニ住宅がコンセプトでした。人生いくつになっても、暮らしにはこの3つが最も大切、というのが大原さんの終(つい)のすみかのあり方でした。

家庭料理研究家の大原照子さんのキッチン
デザインが抜群で掃除しやすい換気扇は、フィルターが食器洗い機で丸洗いできるドイツのミーレ製

そこには終活に向かい、人に迷惑をかけないことをモットーにしながらも、あえて後期高齢者仕様にはしない、という大原さんの明確な美学が貫かれていました。

日本人は明治以来、生き方、暮らし全部を西洋に見習ってからというもの、気が利いて洒落た暮らし方を忘れている節があります。とても残念なことです。

日本製の西洋風家具は作りがなんだか安っぽいのは否(いな)めません。ちょっとしたディティールへの配慮と洒落た遊び心が欠けているのです。機能性を重視するのは大切なことですが、消費者として、電化製品などはシンプルでスッキリしたスタイリッシュなデザインを目指して欲しいと日本のメーカーには要望を出したいです。

家庭料理家大原照子さんの洗面所
シンプルの中に、こまやかな配慮ひとつで楽しい暮らしは、身も心も息づきます
シャワールーム
隅々にこだわりが生かされ、最小限の持ち物で満足するそのアイディアを見習いたい

なにより大事なことは、家具や食器は妥協せずに選ぶことです。少ない品々を愛着をもって丁寧に使うコツは、大原さんのように美的感覚に磨きをかけることです。一つ一つの道具をオブジェのように、実用と美観を兼ね合わせて配置しています。大切はものだからという理由と簡潔という二つの観点から、自ずと手入れも行き届きやすくスムーズにできます。

よい品との出会いを大切に、いつまでも共に月日を重ねていきたいですね。すぐに飽きてしまうような品選びはご法度です。最期まで一緒に暮らすつもりで選ぶのが、勘所です。

家庭料理研究家大原照子の小部屋
プライベートな天井の低い小部屋はベッドを置かずに 螺鈿の机と小箱はお父様の愛用品だった品

いかがでしたでしょうか、「足るを知る、終(つい)のすみかのシンプルライフ」。わたしも60歳を超えた今になってようやく、大原さんの選択が理解できるようになりました。

年齢を重ねると共に思慮が深みを増し、生活の仕方を便利にまた要領も心得てエンジョイする方法。捨てるこだわりと守るこだわりの奥義を大原照子さんのおしゃれで、元気で、愉快なシンプルライフから垣間見せていただきました。暮らしは、あなたにとってもわたしにとっても人生の中心となる要です。ご一緒に楽しんでまいりましょう!

それでは次回もお楽しみに。最後までお読みくださいまして、ありがとうございました。

大原照子著『55㎡の暮らし替え』スローライフの舞台作り 文化出版局

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