ヒジャブは顔を引き立たせる

真行寺君枝

ヒジャブとはイスラム女性の頭を包む布のことです。アラビア語で「覆うもの」を意味し、そこには「貞淑」「道徳」の含意が込められています。ムスリムの成人女性は、肌(顔と手以外)と髪を外出時に露出することは許されません。

わたしたちの文化には見られない習慣なので、特異に映るかもしれません。けれども少し時代を遡ってみると目的は違うのですが、形式的には日本では江戸時代に大流行した頭巾と同じです。欧米ではベールやフードにあたります。

頭巾
江戸時代に大流行
ヒジャブを着用する国と女性たち
地図:赤(法的規制)黄(公共 多くの女性が着用) 薄橙(一般的 社会に浸透している) 緑(必須 義務化)下段 左:アフガニスタン軍と警察 中:ナブルス(パレスチナ自治区) 右:ソマリア女性

さらに歴史を遡ると、ヒジャブの最初の言及は紀元前1400年以降の中アッリシア法の規範に見られます。尊敬と高い地位の印として着用されていました。奴隷や売春婦が身につけることは禁止されていたのです。

古代ギリシアやローマでは一般化し、12~13世紀の中世ヨーロッパでは髪を完全に覆うベールを女性は着用していました。それをウィンプルと言いました。キリスト教文化圏で既婚女性が髪を見せるのは、見苦しいことではしたないとされていたのです。

ベールとスカーフとウィンプル
左中段:「ウィンプルをつけたキリスト教徒」ナショナルギャラリー蔵 右:ミハイル・ネステロフ作「大いなるベール」ロシア美術館蔵

ウィンプルは澱粉がつけられていて、所定の方法で折り目が付けられ、折りたたまれ、その後の精巧なバージョンでは、コルネットなどのワイヤーまたは枝編み細工品のフレーミングでサポートしました。近代以降の一般人は、ガーゼかシフォンを身に着けるようになりました。現在は修道女の伝統的な制服として残っています。

ベールを纏う聖母
左上:聖母 ローマ 2世紀 下:フランスの女王となったバイエルンのイザボー 新世紀辞書 13世紀 中:『受胎告知』 ボッティチェリ ウフィツィ美術館蔵 右:天使と聖人との聖母子 聖カタリナ修道院 600年頃

少し歴史を振り返ってみると世界中で行われていた習慣で、イスラムに限ったことではなかったことがわかります。

またそれは女性だけではなく、イスラム男性はターバンかクーフィーヤを頭に巻いています。二つの違いは、ターバンが頭の上で固まっているのに対して、クーフィーヤは首の後ろまで布が垂れていて頭部全体を覆うところです。


ケニアのカクマ難民キャンプ(開設:1992年 人口:約7万人 住民出身地域:南スーダン、ソマリア、エチオピア、ブルンジ、コンゴ民主共和国、エリトリア、ウガンダ)で生まれたハリマ・アデンさんは、ヒジャブをつけたスーパーモデルとして活躍しました。

ヴォーグ表紙に配されているヒジャブを着用した女性

けれどもヒジャブへの理解を得られず意に沿わない経験をしたことからキャリアをストップし、現在は難民の子供たちの環境を改善するために尽力しています。

ヒジャブを実際に着用する女性たちはそれを抑圧と捉えるよりも、神秘のベールに包まれることによって生まれる安心感と慎みを尊重しています。

では美的観点から見た場合はどうでしょうか。ヒジャブには顔を象徴的に浮き上がらせる効果があります。この髪を隠してしまうという引き算による手法は、美を際立たせるエフェクトともなるでしょう。

わたしたちは顔の作りをほかのどの部分よりも重要視する傾向にありますが、髪の乱れは心の乱れとも言われるように、美を決定付けるのは実はヘアスタイルなのです。髪さえきちんと整えていれば、ノーメイクでも構いません。

男性・女性を問わずターバンや帽子といった頭を包む装飾品には、大事な頭を保護する役割がありますが、人物を立派に見せ、格調高く引き立てる非常に便利で有効なアイテムということを覚えておくのは有益であって、無駄にはなりません。

The hijab, a scarf that wraps around the head of a Muslim woman, means “covering” in Arabic, and also includes “chastity” and “morality. Adult women are not allowed to expose their skin and hair except for their face and hands. Born in Kenya’s Kakuma refugee camp (established in 1992, population: about 70,000, home to South Sudan, Somalia, Ethiopia, Burundi, Democratic Republic of Congo, Eritrea, and Uganda), Halima Aden became a hijab-wearing supermodel. She stopped her career after a disappointing experience that undermined her understanding of the hijab, and is now working to raise awareness and improve the environment to bring hope to the closed world of refugee children. The women who actually wear the hijab see it as a precious covering that allows them to attain modesty by wrapping their skin and hair in a veil of mystery. There seems to be no damage of oppression there. The cultural differences are surprising, but what about from an aesthetic point of view? The hijab has the effect of symbolically highlighting the face, an effect that, by subtraction, can be said to accentuate beauty. The face is important, but it is the hairstyle that determines beauty, as it is said that disorder of the hair is disorder of the mind. As long as your hair is in order, you can wear no makeup. For both men and women, turbans and hats are also useful and effective items that can make a person look respectable and dignified.

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