あなたを幸せにするオウ体験

オーロラ

オウ体験とは?

 プロローグ

オウ体験。聞いたことのある方は、そう多くはないかもしれません。

オウ体験のオウとは畏敬(awe)という意味です。

ですので、「畏敬の体験」ということになります。

あなたが最高の人生を送るにあたって、畏敬(awe)の念を経験することが大きな助けになる、というお話をさせていただきたいと思います。

臍の緒がついたままの出産直後の赤ちゃん

目次


 ジェニファー・ステラ博士のラボ

この研究で顕著な人物の筆頭に、トロント大学心理学部の助教授ジェニファー・ステラ博士がいます。彼女は言います。「畏敬の感情と出会うことを、オウ(awe)体験と言いますが、この畏敬の感情は、わたしたちの健康や幸福に大きな役割を果たしているのです。」

海雲の上の旅人 カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ
『海雲の上の旅人』カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ ハンブルグ美術館蔵

あなたは秘境を訪れたことはありますか?

たとえばグランドキャニオンの縁に立ったり、富士山に登ったことがあるなど何かしら経験をお持ちだと思います。広大な宇宙を想像したり、朝焼けや夕焼け、満点の星空を見上げるときなど、あなたは大自然に包まれ、その自然と一体となった感覚を味わうとき、あなたはオウ体験をします。

富士山の朝焼け
富士山の朝焼け
今子浦(兵庫県)の夕日
今子浦(兵庫県)の夕日

あるいは、混雑した電車の中で見知らぬ人に席を譲る人を見たときに、敬いの気持ちを感じるかもしれません。その感情は畏敬の念です。

ステラ博士は、それが幸福、健康、そしてわたしたちの社会的相互作用を強化する上で、重要な役割を果たすことができると主張します。

人類はそれを古代から実行してきたはずです。人間同士が仲良くし、最終的に互いに協力し合って困難を乗り越えて今に至っているのですから。

ステラの研究分野は、感情、心理生理学、健康、利他主義、道徳、ポジティブ心理学ですが、それによって個人や社会集団がどのように繁栄するかを理解することが、彼女の研究の中心的な目標です。社会性、健康、幸福といったポジティブな感情が、どのように成功を促進するかに焦点を当てています。

わたしたちの感情は、困っている人を助けたり、グループの利益のために自分の目的や目標を犠牲にすることがあります。

そのときわたしたちが駆り立てられる感情は畏敬の念はもちろんですが、それ以外にも対象への思いやり、感謝、高揚、愛、インスピレーションなどが考えられます。

ステラのラボでは集団生活の基盤である道徳を調査して、対人へ判断をくだす影響力を調べています。

ステラ博士は、非倫理的に行動した人をどのように判断するか、そしてなぜ道徳的な問題についての議論は困難なのかその仕組みを探っています。

 オウ体験が、幸福にとってどのように重要なのか

オウ体験とインスピレーションや驚きなどの感情との重要な違いの一つは、オウ体験はわたしたちを小さく感じさせることです。

天の川
銀河 ポーランド

わたしたちは、わたしたちの世界で何が起こっていて、それが自分に直接影響を与えているかといった、自己中心的な考えをめぐらせます。そしてそれに多くの時間を費やしています。

けれども自分のことを小さく感じると、人は謙虚な気持ちを抱き、それによって傲慢、ナルシシズムなどの利己的な傾向が減るのです。

そして自分が小さくて謙虚に感じることで、あなたは他の人と関わり、他の人とのつながりを深めたいと思うようになります。

これは幸福にとって重要なことです。

 向社会的行動と利他的行動

大規模な社会で調和して生活するためには、個人がより利己的な傾向を抑制し、他者の福祉を優先する必要があります。

震災1ヶ月後の福島県いわき市小名浜 東京新聞
震災1ヶ月後の福島県いわき市小名浜 東京新聞

ステラは健康、感情、利他主義、向社会的行動(こうしゃかいてきこうどう)とモラルを中心に調べます。

向社会的行動というのは、私利私欲を求めない無私の精神で行う自発的な行為です。ボランティアや寄付などがそれに当たります。向社会的行動を行った結果として得られるものは自尊心や自信、また親和力(互いに心を合わせて親しみ合う)によってもたらされる満足感です。

ステラのラボでは具体的には、思いやりや気遣い、いたわりなどの感情が他者への共感を呼び、利他的行動を促してグループ内の協力と結束を強固することになり、そしてそれが個人にひるがえって健康と幸福が高められることを研究しています。

また、道徳的な行動を奨励して、道徳的な規範を支持する方法を探っています。

自己中心を超えて、他者やグループや社会全体を配慮するにはどうすればよいでしょうか。

ステラが取り組んだ2018年の調査データによると、日常生活でオウ体験をより頻繁に経験していると報告した人は、友人からより謙虚であると評価されました。

広大な山々と天の川
広大な山々と天の川

自分を小さく感じ、謙虚に感じ、他の人とつながりたいという欲求は、人類がグループや社会を形成して集合的に生活してきた理由の一つと考えられます。

オウ体験は、社会の調和を維持するためにも必要と思われます。

 畏敬(awe)は、健康にも役立ちます

ステラ博士は、体の免疫系に対する畏敬の影響も研究しています。より畏敬の念を抱いていると報告した人々は、免疫面から健康状態も改善していることがわかりました。

炎症誘発性サイトカインの慢性的な上昇は、糖尿病、心臓病、うつ病などの慢性疾患に関連しています。

94人の学生のグループで、否定的な感情よりも肯定的な感情を感じていると報告した人は、慢性炎症性サイトカインのレベルが低かったのです。

しかしネガティブな経験も、畏怖・畏敬の念を引き起こす可能性があることを付け加えておきたいと思います。東日本大地震もそうでした。自然災害を考えてください。

エトナ火山
エトナ火山の噴火 写真:スプートニク

あなたから「畏敬の念を引き出す可能性があるもの」の公式はありませんが、より頻繁にそれに遭遇する助けになることがいくつかあるのでご紹介したいと思います。

 自然の中に身を置く

調査によると人々は一貫して、「自然」を畏敬の念を抱く最高の方法のひとつにランク付けしています。

自分の立っている場所を広大に眺めることができる山や海に行ってみてください。

日の出や日没を見てください。空を見上げてください。

あるいは自然の中を散歩して、今まで見たことのないものを探してみてください。

別府湾の朝日
別府湾の朝日

 コンフォートゾーンから抜け出す

もしもあなたが今の現状を変えたいと思っているとしたら、日常という居心地のいいぬるま湯に浸かっている状態、すなわちコンフォート(快適)ゾーンから抜け出す勇気を出してください。そうしなければいつまで経っても現状を変えることはできません。当たり前のことですが、現状に居続ければ決して新たな状況や環境は生まれません。

踏ん切りがつかずに迷っているなら、まずはあなたが行ったことのないどこかの町や都市を訪れてみることから始めてみるのも一案です。

 何か新しいことに挑戦!

年齢にとらわれず、新しい自分を発見する新たなチャレンジに挑みましょう!

そう言われてもすぐには見つからないかもしれません。

その場合は、あなたがあまり知らない誰かについて調べたり、あなたを刺激する人物の伝記を読むのもおすすめです。畏敬の念は、目新しさと広大さが教えてくれると記しましたが、それは誰かの才能や誰かの良さに気づくときにも現れるのです。

 四次元の世界へ

ご存知だと思いますが、わたしたちは三次元の世界に住んでいるのではありません。四次元の世界に生きています。三次元は、上下・左右・前後の独立した方向に広がりをもった空間です。それに時間が加わっって、刻々と変化する世界にわたしたちは暮らしているので、あなたは四次元に身を置いているということになります。

銀河
天の川 サンフランシスコ

オウ体験に関していえば、世界で最も高い山を映し出す映画を見たり、交響曲の録音を聞いたりすることで畏敬の念を抱くことができます。けれどもそうした体験では、実際に遭遇して感じる経験の場合に比べておそらく淡いでしょう。

畏敬を経験するためには、バーチャルリアリティではなく、時間をかけることも大事です。

 心を開いてください

畏敬の念の経験は、あなたの心のしこりを取り除き、心をなめらかに磨く感覚です。

ミレー『晩鐘』
ミレー『晩鐘』 オルセー美術館蔵

 エピローグ

いかがでしたでしょうか?

現在、都会の雑踏の中で暮らしているわたしにとっては、現状の暮らし方に今一度考えを巡らしてみるよい機会になりました。

火星の日没
火星の青い日没

大自然は心を浄化してくれます。わたしは都会の片隅のスモッグの中で育ったので、自然というものにあこがれ、自然のなかで心を解放して初めて息がつけるようになりました。

子供が生まれてからは、長野県のシビラ(芝平)という標高千メートルの山上と東京都を行き来しながら子育てをしていました。その廃村での暮らしは本当に尊いものでした。自然の美しさと厳しさを教わりました。

そうした生活から遠のいて気がつけばもう30年近くにもなり、再び都会生活にどっぷり浸かった日々を過ごしているので、「オウ体験」という考えを知ることができたのは、とても有益な情報でした。

平凡な日常の中でも頭の上に広がる空と、地球の大地を踏みしめていることを意識して、大きな宇宙、自然に包まれていることを忘れないようにしようと思います。そうして些細なことに気を煩わしたりとらわれたりせずに暮らそうと思うと、なんだかちっぽけな自分なのに、ちっぽけではないような意識がどこからか流れ込んで爽やかな気分になります。そうだ「自然」を友として語りかけてみましょう。あなたもよかったら、ぜひ!

参照元 Jennifer Stella BA(ペンシルベニア大学心理学および人類学) 博士号(カリフォルニア大学バークレー校の社会/人格心理学) NBCニュース

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